「バカゲー」を考えるためのインディゲーム・フリーゲーム7選

「バカゲー」といえば、何を思い出すだろうか?コンシューマゲームで言えば、例えばスクウェア・エニックス『せがれいじり』などを、筆者の場合は思い出す。もちろん、セガからも『君のためなら死ねる』などの「バカゲー的名作」が出ている。

「バカゲー」は主観的で、文脈的だ。プレイヤーが「これ、バカだなあ」と思えば、きっとどんな名作でもバカゲーとなってしまう。例えば、『ドラゴンクエスト』の「ゆうべは おたのしみでしたね」という伝統的なセリフは、きちんとしたゲームの中にちょっとした「遊び心」が入っているという意味で、プレイヤーによっては「バカだなあ」と感じるかもしれない。その意味では、『ドラゴンクエスト』さえ、人によってはバカゲーとみなしうる(余談だが、関西人の「アホ」に当たるのが関東人に取っての「バカ」であるという説もある。筆者自身は関東人なので、「バカだなあ」といった時に「愚かだけど愛すべき存在だなあ」というような文脈で使うことが多い。必ずしもそうでない時もあるのだが。「バカゲー」と言わずに「おバカゲー」と言うと、より伝わるかもしれない。斯様に言葉はむずかしい)。

「あまりに狙いすぎたバカゲー」というのは、もはやバカゲーと呼べないのか。バカゲーをバカゲーとして楽しめず、「これ狙ってやってるだろ!」とメタな認知をしてしまった瞬間に、バカゲーはそのバカゲー性を失う(可能性がある)。その証拠に、「このゲームはバカゲーですよ」とゲーム自ら銘打っているゲームは驚くほど少ない。確かに冒頭に挙げた『せがれいじり』の公称ジャンルは「おバカ」であるが、『君のためなら死ねる』のジャンルは「アクション」または「タッチアクション」。間違っていない。インディゲームで言えば、「ぐんまのやぼう」などのゲームもあるが、ジャンルは「シミュレーション/教育(iOS版)」。

「バカゲー」と「クソゲー」の違いは何なのか。毎年、某所では「クソゲーオブザイヤー」という、その年のクソゲーを品評する語りの場がある。ではクソゲーとは。人をイライラさせる仕様や、単なる不具合はクソゲーなのか。「ゲームとして成立していないもの」というのを、クソゲーというのか。仮にそうなのであれば、ゲームとはそもそも何なのか。そうそう、そういえば「ネタゲー」なんてのもあるよね。

もう「バカゲーって何なのだろうか……?」と考えだすと止まらなくなってしまう感じである。「バカゲー」という文字がゲシュタルト崩壊してくるほどだ。ここは読者の方々にも一緒に考えてもらいたい、というのが今回の趣旨である。

「バカゲーの定義はそもそも……」などと、初出や歴史的経緯を語るのは自由だ。インターネットで「バカゲー 定義」と検索すれば、人に決められたおバカの定義、クソゲーとバカゲーの違いの話は出てくるだろう。しかし、ことバカゲーに関して、借り物の言葉を使って語ることは虚しくはないだろうか。君は「バカ」「アホ」という言葉を日常で使うとき、いちいち辞書を引いて使っているだろうか。否。だからこそ、今回は自分のアタマで考えよう

というわけで、今回は我々が「これはバカゲーじゃないのか……??」と、勝手に「バカゲー」を考える上で題材になりそうなゲームを、もぐらゲームスのメンバーで取り上げてみた。しかも、もぐらゲームスはインディゲームやフリーゲームなどを扱っているサイトだから、今回もそれに限定した。正直、バカゲーだと思って作っていない制作者の方もいるだろうから、選出作業にはかなり慎重を要した。本記事は断じて、罵倒の意味での「バカゲー」を紹介する記事ではなく、愛すべき存在としての「バカゲー」を取り上げているのだ。結果、割とコンセンサスのとれたバカゲー(?)が多くなった印象だ。本記事で、バカゲーに思いを馳せることが少しでもできれば幸いだ。(Noah)

プロフェッショナル警察

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本特集のトップバッターはピクニックマン氏による『プロフェッショナル警察』。このタイトル画面の時点で嫌な予感がしたアナタ、大正解です
本作は作者自身によるフルボイス、かつ全く本編の進行と関係ないオンライン要素搭載という破格のセッティング。本当の真犯人を探す本格派刑事ドラマ風の何かだ。なんというか頭痛が痛い。
なぜ効果音含めてフルボイスなのか、なぜオンライン要素(しかもランキングつき)を搭載したのか、本当の真犯人とは……百聞は一見に如かず、上記のタイトル画面で嫌な予感がしたアナタもピンと来たアナタも、「あなたはクリックですか……?」と思ったアナタも……一刻も早くプレイしていただきたい。そこには「ピクニックマンワールド」としか呼びようのない世界が広がっている。こちら側の世界へようこそ、というやつだ。
また、笑わせることしか考えていないかのようなガワであるにも関わらず、2Dシューティングアクション的なゲーム部分は明快にして快適。バカゲーと呼ぶのが躊躇われるくらいきちんとしている。もはや色々通り越して憎いレベル
さておき、もぐらゲームスではゲストライター・じょーねつ氏による極めて情熱的な本作のレビューも掲載しているので、気になったアナタはぜひそちらも。ARE YOU CLICK?(水原由紀)

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納豆道

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公式ページによる「混ぜ・タレ・ネギ・奥義を駆使して納豆をおいしく混ぜるゲームです」という紹介文が目を引く本作は、ひたすら納豆を混ぜるゲームとして公開され、第五回WOLF RPG エディターコンテスト(ウディコン)にて斬新さ部門1位、総合5位を受賞したゲーム「納豆」の、スマホ版移植作品だ。無料版・有料版の2つがあるが、基本的な面白さはどちらのバージョンでも体験できる。
ゲーム内容としては、納豆の混ぜ方や納豆雑学を学びながらゲームを進めていくストーリーモードからしてなんとも印象深い。本作は一見「バカだなぁ」と思えるような、とてもゲームにできないような題材を、しかし実際にゲームとして成り立たせてしまった…という意味でバカゲーと言えるだろう。
物語自体は非常に短いものの、とある定食屋で謎の男女に出会ったことから、納豆をめぐる奇妙な物語に巻き込まれる筋書きもクスリと笑いを誘う。ある特殊な動きで納豆を混ぜると発動する「燕返し」や「富士山」などの「奥義」についてはぜひプレイして見てほしい。納豆というテーマやシステム面の特徴が注目された本作だが、ストーリーモードの物語を綴るなんともいえぬテキストにも、また良い味がある。納豆だけに。(poroLogue)

iOS版ダウンロード(無料版):

Android版ダウンロード(無料版):
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うんこが漏れないように我慢しながらトイレへ向かうゲーム

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タイトルの通り、クソゲーである。プレイヤーはトイレまで爆発せずにたどり着くことができるのか。上のゲージが右まで行ってしまうと、漏らす。通行人は何の恨みがあるのかは判らないが、口々に「漏らせ!」と言いながら腹パンしてくる。明らかに手抜き……かとおもいきや、Zキーで早く動くことができるが漏らしやすくなる、X連打で我慢ができる、ファイアを打つと通行人を消せるが圧倒的にゲージが溜まるなど、意外にゲームデザインがしっかりしているので、よく出来たクソゲーであると言える。また、中盤に出てくる『男女』のリズムにあわせてボカロキャラクターを避けるゲームが筆者のお気に入り。(Noah)

ダウンロードはこちらの動画紹介文から

薔薇と椿

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まるで昼ドラのようなタイトルのブラウザゲーム『薔薇と椿』。タイトルのごとく、横小路一族の女たちの華麗な戦いが描かれている。女の喧嘩がゲームになったということで、このゲームはビンタをするゲームだ。タイミング良く、ビンタをして、相手のビンタを避けよう。
ただビンタをするだけのゲームならシンプルでどこかにあるかもしれない。だが、ただビンタをするだけなのに、昼ドラばりのストーリーが設定され、一族の系譜がある。喧嘩の場面なのに、淡々とターン制で交互にビンタをし合うキャラクターの姿は非常にシュールだ。
制作したのは遺跡探索アクション『LA-MULANA』を開発したインディゲームデベロッパーNIGORO。彼らは続編である『薔薇と椿2』や『薔薇と椿とLa-Mulana』などの作品も夜に送り出している。なぜ彼らがこんなゲームを世に送り出したのか、その訳はリーダーの楢村氏のインタビューも合わせてご覧いただきたい。(すんくぼ)

KickStarterで2000万円超を集めたNIGOROが挑む本気のゲーム作り。NIGORO楢村氏インタビュー【前編】
日本のインディゲーム開発者の連携で。NIGORO楢村氏インタビュー【後編】

プレイはこちらから

Happy Wheels

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ニコニコ動画で人気の実況者・アブ氏の実況でも話題になった海外発のブラウザゲーム。
『Happy Wheels』は前進と後退、体の傾きを調整するだけ。スイスイ走ってゴールを目指したいところだが、段差や罠など容赦ない仕掛けが待っている。シュールにも千切れる手足や同乗者たち。最初はグロいと思うかもしれないが、あまりにもシュールな光景と理不尽な仕掛けの数々に徐々に慣れてきてしまう。
そして、このゲームを最も「バカゲー」たらしめているのは、ユーザーがステージを作り、共有することができるというシステムである。どこぞの映画やアニメ、ゲームをパロったステージから、問答無用の高難度ステージまで、まさに思いつく限りのバカなステージがプレイヤーを待っている。題名の通り、Happyな気持ちになってしまうこと間違いなし。(すんくぼ)

プレイはこちらから

勇者の憂鬱

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時は2003年。今は『魔王物語物語』や『ムラサキ』で知られるカタテマから放たれた刺客、その名も『勇者の憂鬱』。ドラクエ・FF的なRPGのお約束やあるあるネタを笑い飛ばすRPG風の「見るゲー」とでも言うべき作品だ。あるいは『大後悔日誌』のようなRPGシミュレータ、とでも言えばいいだろうか。本作はRPGにつきもののエンカウント方式だの、ダンジョンで分かれ道があったら片方は宝箱だの、強制負けイベントだの……と言った“RPGあるある”にキャラクター自らツッコミ・解説を入れ続けるコミカルな作品。顔グラが妙にリアル調なのも笑いを誘う
バカゲーというよりはあるある的なネタで笑うギャグ満載の短編といった要素が色濃く、投げやり気味のセリフと斜め上から飛んでくる演出の数々が見所だ。(水原由紀)

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アングリマーラ


 
こちらはダウンロードして遊ぶことはできないが、動画としてアップロードされている作品『アングリマーラ』。ニコニコ動画をはじめとした動画サイトには、「作ってみたのでプレイ動画だけ上げるね!」というゲームが多く、ダウンロードできないのは大変残念だ。たとえば、ゲーム制作者の佐藤五三郎氏の作品群の中で、『アングリマーラ』がまさにそんなゲーム。「奥深いルールも含めて」とても面白いのだが、これは「ダウンロードして遊ぶことができない」というところまでがゲームなので、これはこれで良いのだろう(これ以上の説明は野暮なので是非視聴してもらいたい)。佐藤五三郎氏の『他人の家』については、制作者サイトからダウンロードして遊ぶことができる。

ここまで、バカゲー性を秘めたゲームを紹介してきた。冒頭にも述べたような理由で、あなたが「バカゲー」だと思えばどんなゲームも「バカゲー」なのである。是非様々な視点でバカゲーを愛してみてもらいたい。

なお、バカゲー関連の記事としては、先述した『ぐんまのやぼう』の制作者であるRuckyGames氏と、ゲーム研究者・井上明人氏による対談記事を強くオススメしておきたい。

これからの「ゆるゲー」の話をしよう。 RucKyGAMES×井上明人対談(前編・全3回)
「『ぐんまのやぼう』、ヒットすると思ってたら殴られそう」 RucKyGAMES×井上明人対談(中編・全3回)
「がんばりたくないから、がんばる」RucKyGAMES流・ゲームの作り方 RucKyGAMES×井上明人 対談 (後編・全3回)


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    通称のあP。「もぐらゲームス」エグゼクティブプロデューサー&共同編集長。ゲームをする人。「ゲームのちからで世界を変えよう会議」の中の人。経営戦略(ゲーム産業)と金融が一応専門分野。 MMORPG「リネージュ」の元プレイヤー(8年ぐらい、10,000時間ほどプレイ)。長らく一つのゲームをやりこむ派でしたが、最近は雑食気味にいろんなゲームをプレイしています。思い出に残っているゲームはリネージュ、ティアリングサーガ、勇者のくせになまいきだ。or2など

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    poroLogue(@poroLogue

    もぐらゲームス編集長。大学在学中にフリーゲームをテーマとした論文を執筆。日本デジタルゲーム学会・若手発表会にて「語りとしてのビデオゲーム(Videogame as Narrative)」を発表。NHKのゲーム紹介コーナーへの作品推薦、株式会社KADOKAWA主催のニコニコ自作ゲームフェス協賛企業賞「窓の杜賞」の選考委員として参加、週刊ファミ通誌のインディーゲームコーナーの作品選出、株式会社インプレス・窓の杜「週末ゲーム」にて連載など。

    フリーゲーム作者さんへのインタビュー・レビューなど多数。フリーゲーム歴は10年半ばほど。思い出に残っているゲームは『SeraphicBlue』『Berwick Saga』。

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    すんくぼ(@tyranusii

    学生時代、MMORPG「リネージュ」で朝から晩まで飽くことなきレベル上げと戦争に没頭する毎日を送る。本業では廃人卒業後、国家公務員を経て、再びゲームの世界へ。「もぐらゲームス」を立ち上げました。ハマったゲームはライブアライブ、ファイアーエムブレム 聖戦の系譜、デモンズソウルなど。
    個人ブログもやってます:もぐらかペンギンか

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    水原由紀(@mizuharayuki

    読みは「みずはらゆき」。ゲーム業界のはしっこに勤めつつ、色々書いてます。思い入れの強いゲームは初代『.hack//』や『風ノ旅ビト』、『Dear Esther』『ゆめにっき』『Ruina 廃都の物語』などなど。2015年マイベストははむすたさんの『ざくざくアクターズ』。美学と工学の交差するゲームを求め、今日も片道切符。Narrative関係勉強中。