今後のアップデートと完成が期待される、注目の制作途中フリーゲーム3選(2020年12月号)

フリーゲーム,連載

日々、個性豊かな新作が誕生し続けているフリーゲーム。その中には完成品に限らず、現在制作途上のものもあり、公開後も都度実施されるアップデートで完成に向け、着々と進歩し続けている。

本記事では、そんな制作途上のフリーゲームより注目の3本を紹介。

2020年ラストとなる今回はRPG、シューティング、シミュレーションRPGのジャンルから注目作をピックアップ。どれも今後のアップデート、完成版の登場が期待されるタイトルだ。機会があればぜひ、プレイしてその魅力を確かめてみて欲しい。

目次

  1. アリアの創造
  2. エルフィンフォース・テストパイロット
  3. Artifact Of War -火風の双騎-

アリアの創造

2019年にWindows PC用フリーゲームとして公開されたノンフィールドRPG『創造の切り札』ダウンロード版  / ブラウザ版)の派生作品。「ラデマルク」と呼ばれる町が跡形もなく消え去ったとの噂を耳にし、現地へ向かった青年「ケン」が奇妙な世界へと迷い込み、消え去ったラデマルクの住民たちと、ある少女の記憶を巡る戦いに巻き込まれていくというストーリー。「RPGアツマール」にてブラウザ版の形で公開されており、執筆時点では本編3章までがプレイ可能になっている。

内容としてはターン制のコマンドバトルRPGだが、マス目で構成されたダンジョンマップを移動し、幾つかの階層を巡りながらゴール到達を目指すステージクリア方式で進行する風変りな作りになっている。

戦闘も「ヘイトシステム」なる敵の行動を予測する独自機能を搭載。キャラクターそれぞれの「ヘイトゲージ」の溜まり具合によって、誰に攻撃が来るのかが可視化されるので、それを踏まえた行動を取ると言った戦術・戦略的判断が試される。

経験値とレベルの概念もなく、戦闘で得られた「コスト」を消費して各種ステータス強化に繋がる「才能(スキル)」を開花させたり、その補助及び攻撃技追加などの効果を与える「カード」を装備するという特徴的な設計。特に「カード」はどれを装備したかでキャラクターごとの運用法も変わるなど、高いカスタマイズ性が異彩を放つ。

他に探索時には「行動権」と呼ばれる手数を消費し、アイテム類の回収や仕掛けを操作すると言ったユニークな要素が満載。消えた町の謎に迫っていくストーリーも興味深く、引きのタイミングが絶妙で今後の展開が嫌でも待ち遠しくなる。『創造の切り札』の派生作品を謳っているが、未プレイでも問題なく楽しめる独立したゲームになっているので、高い戦略性と難易度的に手応えのあるRPGが好きな人ならばぜひチェックいただきたい1本だ。

[基本情報]
タイトル:『アリアの創造』
作者:kainushi
クリア時間:3~4時間(※執筆時点で3章まで実装済み)
価格:無料

https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm15521

エルフィンフォース・テストパイロット

『アクションゲームツクールMV』製の縦スクロール型シューティングゲーム。元々は作者のばなな豆乳氏が制作中の探索型アクションゲーム『エルフィン・フォレスト』の寄り道を兼ねて作り始めたタイトルで、気づいたらどっぷり作り込んでしまったというユニークな誕生経緯を持つ。

複数の敵などをロックオンして照射するレーザーなど、往年の名作シューティングゲームから着想を得た要素が満載の作りだが、特筆すべきは打たれ強い自機。ダメージ制を採用しているのだが、回復アイテムの「青カプセル」が高頻度で出現し、積極的に取得していけば、敵の大群や弾幕の嵐を強引かつ簡単に潜り抜けられるようになっている。自機の耐久力も最大100と高め。ただし、時間経過で少しずつ低下していく性質を持つため、下手に攻撃を受けすぎると窮地に追い込まれる。

また、回復に集中しているとスコアが伸びないデメリットも。稼ぎたい時は「青カプセル」を通常のショット攻撃で撃って「緑カプセル」へと変化させ、スコアレベルを上げて回復の機会を減らす判断が必要になる。そのため、高得点狙いだと高難易度へと一変。プレイスタイルに応じ、緩くも辛くも自在な設計で、非常に意欲的なバランス調整が凝らされたシューティングゲームになっている。

グラフィックも非常に完成度が高く、演出面でもタイトル画面ではボーカル曲を採用すると言ったこだわりが炸裂。プレイ時間3~5分、完成版も4ステージ構想の短編を想定しているとのことだが、システムやバランス調整の面で興味深い特徴を多く持つ。シューティングゲーム好きなら要チェックの1本だ。

なお、推奨環境が少し高めなほか、演出に凝っている関係で処理落ちが生じやすい。その点の問題解消を図った「LiteEditon」も「Ci-en」で公開されているので、もしもの時はこちらをどうぞ。

[基本情報]
タイトル:『エルフィンフォース・テストパイロット』
作者:ばなな豆乳/BananaSoyMilkov
クリア時間:3~5分
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちら
※ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/23131

※Ci-en
https://ci-en.dlsite.com/creator/2981/article/319118

Artifact Of War -火風の双騎-

大陸イバラードの各地に眠る「アーティファクト」なる伝説の武器を巡る騒乱を描く『SRPG Studio』製のシミュレーションRPG(SRPG)。どこか懐かしいキャラクターの顔グラフィック、テキスト全般のフォントが異彩を放つ作品。

伝統的な交互ターン制SRPGで、武器の相性によって命中率などに補正がかかる「3すくみ」、敏捷の差分によって発生する再攻撃など、システム周りも「SRPG Studio」の基本に準拠。独自要素としては「隊長スキル」。「隊長の証」と呼ばれるアイテムをユニットに持たせて出撃させると、その対象に応じた異なるステータス補正が全出撃メンバーにかかる。効果は守備を伸ばしたり、力と速さを伸ばすなど様々。誰に持たせたかでマップごとの攻め方が変わる、ユニークなシステムになっている。

さらにファイアーエムブレム トラキア776』をオマージュした捕縛システムを搭載。敵ユニットよりも体格の数値が上回る時に専用コマンドが現れ、攻撃を仕掛けて倒せれば対象が捕縛され、装備している武器類をはぎ取れるようになる。だが、捕縛狙いの時にはユニットのステータスにマイナス補正がかかるので、下手に仕掛ければ返り討ちにされることも。そんな仕様も元ネタを忠実に再現していて、経験者ならニヤリとする駆け引きが楽しめる。

他に疲労システム(規定値超過時の出撃制限)、天候によるマップ地形の変化などの仕掛けも用意。演出面もどこか懐かしい感じで、特にマップ攻略開始時の「FIGHT IT OUT!」は、人によっては手を取り合いたくなるとかならないとか。ちなみにver0.02まではボイス付きだった。(※最新のver0.06では残念ながら削除)
全体的に90年代のSRPGを遊んだ世代の琴線を刺激する作りになっているので、興味があればその手を汚しに……じゃなくて、遊んでみていただきたい。

念のためだが、書いておく。欺き欺かれる心配は無用だ。多分。

[基本情報]
タイトル:『Artifact Of War -火風の双騎-』
作者:DEMIR
クリア時間:10~11時間半(※7章外伝まで)
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/22633

  • シェループ(@shelloop

    様々なゲームに手を伸ばしたがる人。2D、3Dのアクションと手強めの戦略シミュレーションを与えると喜びます。

    Webサイト:box sentence