今後のアップデートと完成が期待される、注目の制作途中フリーゲーム3選(2021年9月号)

フリーゲーム,連載

日々、個性豊かな新作が誕生し続けているフリーゲーム。その中には完成品に限らず、現在制作途上のものもあり、公開後も都度実施されるアップデートで完成に向け、着々と進歩し続けている。

本記事では、そんな制作途上のフリーゲームより注目の3本を紹介。

今回はザッピングアドベンチャー、古めかしい雰囲気の横スクロールシューティング、ミッションクリア型RPGの3本をピックアップした。

いずれも今後のアップデート、完成版の登場が期待されるタイトルだ。機会があればぜひ、実際にプレイしてその魅力を確かめてみて欲しい。

目次

  1. 無碍光のデリートキー
  2. Solar Blaster
  3. デザイア・ダイヤモンド

無碍光のデリートキー

「ツクシ」と「スギナ」、2人の少年少女が「影の男」と呼ばれる謎の人物によって失った物を取り戻すため、奮闘する模様を描く探索アドベンチャーゲーム。章仕立てで用意されたマップを攻略しながらストーリーを進めていくというのが主な内容となる。

主人公が2人という設定特有の「ザッピングシステム」と、それを活かしたマップ構成が最大の特色。基本的に2人は別行動を取る機会が多く、状況に応じて画面右上にあるアイコンをクリック(タッチ)して操作対象を切り替え、様々な障害を取り除いていく形となる。また、ツクシは運動能力に乏しい一方で記憶力に優れる、スギナは運動能力に優れるが記憶力に劣るといった長所と短所も設定。それによって対象を調べた際の反応、その後の展開が変わる仕掛けも凝らされている。

さらに本編には不安定な足場を乗り継ぐ、敵を狙い撃つといったアクション要素の強いイベントも用意。後者は実質、戦闘イベントも同然で、ガンシューティングゲームのような1人称視点の画面構成と演出が強烈な印象を残すこと請け合いだ。

他に操作もマウス(あるいはタッチ)前提で、探索からイベントまで、直感的かつスムーズに動かせて快適。2人のキャラクターを別々に動かすアイディア自体はそんなに真新しい訳ではないが、凝ったマップ構成と豊富なイベント、そして謎多きストーリーでプレイヤーを引き込ませる内容にまとめられている。また、ストーリーについては真面目なものからネタそのものまで、やたら数の多い選択肢も必見。それによって微妙に台詞が変わったりもするため、周回プレイも新鮮な気持ちで楽しめる。

完成版は全4+1章を予定。実は2018年公開の作品で、執筆時点でも序章と1章しか遊べないのだが、十分にその魅力を体験できる出来になっている。完成するのか否かで不安も残るが、可能性を感じる作品なだけに、新展開を心待ちにしたいところだ。

[基本情報]
タイトル:『無碍光のデリートキー』
作者:もりへー
クリア時間:15~20分
対応プラットフォーム:ブラウザ
価格:無料

※プレイはこちら
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm5127

Solar Blaster

古めかしい雰囲気の横スクロールシューティングゲーム。その内容も自機を操縦して迫りくる敵の大群をショットで撃ち落としながらステージを進み、最後に待ち受けるボスを倒すという王道のもの。

少し風変わりなのは、自機が最初からほぼフルスペックであること。移動速度早め、範囲攻撃をサポートするサブ機も2機が追随してくれるので、万全の態勢で敵を迎え撃てるようになっている。さらにショットの軌道もワンボタンで切り替え可能と、状況に応じた立ち回りもスピーディに実施できる。

反面、ステージ全体の密度は濃い。敵は休む間もなく現れるのに加え、進路を塞ぐ障害物も登場し、それを破壊して安全を確保することも試される。
それでいて、再挑戦しやすい。本作は最初からステージセレクト機能が解禁された状態で進行するのもあって、ゲームオーバーを迎えても途中から始められるのである。さらに密度の濃さを踏まえてか、ステージも短めに構成されているので、最初からやり直しになってもモチベーションが低下しにくい。前述の通り、自機は最初から強いため、弱体化で難易度が上がる心配がないのも嬉しいところだ。

古めかしい雰囲気から、本編の進行やシステム周りもクラシックでシビアな作りと連想するかもしれないが、何らそんなこともなく、今風の遊びやすい設計。そんな見た目とは裏腹な遊びやすさが大きな魅力になっている。

しかし、目につく欠点や調整不足の部分も多く、密度の濃さで攻めたステージはもう少し敵の出現量を見直す余地がある。また、硬い敵にショットを当てても効果音が鳴らず、敵も命中時の反応を見せないという撃ち込み感の無さが寂しい。逆にその辺を補強すれば、一気に遊び心地が改善され、本来の特徴が際立つ可能性を秘めている。最終的にどれほどのボリュームが収録されるかは不明だが、独自の個性が見え隠れしている内容。前述の通り、気がかりな粗こそあるが、シューティングゲーム好きには注目1本である。

[基本情報]
タイトル:『Solar Blaster』
作者:OldStyleFactory
クリア時間:10分
対応プラットフォーム:Windows
価格:無料

※ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/25261

デザイア・ダイヤモンド

暑がりな魔王が突拍子もなく企てた、世界中を冬にする野望を阻止するため、レイヤとルーミンの兄妹があらゆる願いを叶える「デザイア・ダイヤモンド」を巡る冒険に出るストーリーを描くRPG。魔王の野望からお察しだが、コメディ色強めの作品である。RPGとしては拠点に当たる自宅からエリアへと移動し、目標達成を目指すミッションクリア形式のゲームデザインとなっている。

最大の特徴は戦闘システム。作りそのものは敏捷性の高いキャラクターから順に行動する、正統派のコマンド選択型。しかしながら、2人それぞれが持つ「特技」に同じ属性のものを連続して使用できない制約が課せられている。例えば氷属性の「アイスクラッシュ」という技を1ターン目に使うと、次の2ターン目では関連する属性の技全てが選べなくなるという感じだ。しかも、この制約は攻撃関連の特技に限らない。回復関連の特技も対象なのだ。加えて、戦闘の難易度も敵の火力が高めに設定されている関係で高め。これもあって、1ターンごとに先を見据えた慎重な判断が試されるバランスになっている。

また、属性相関の概念もあり、弱点に当たる属性の特技を仕掛けると追加攻撃の「チェイン」が発生する。前述の通り、本作は同属性の特技は1回使うと次のターンで使えなくなるため、効率を求めるならチェイン込みのダメージを狙うのが得。しかも、チェインは雑魚敵やボスも決めてくるため、戦闘の長期化を避けたいなら、なおのことおすすめだ。

コメディ調のストーリーとは裏腹に、RPGとしては歯応え十分で、ありそうでなかったアイディアが光る仕上がり。ミニマップの常時表示、探索中でも戦闘中でも拠点へと引き返せるエリア脱出機能の採用など、遊びやすさへの配慮も万全で、作者のこだわりを実感させられる。執筆時点では最序盤しか楽しめないが、十分に魅力を感じる出来。特にRPGに対して戦闘の手応えを求める人なら、ぜひ確かめていただきたい注目の新作だ。

[基本情報]
タイトル:『デザイア・ダイヤモンド』
作者:うるとらごりコング
クリア時間:20分
対応プラットフォーム:ブラウザ
価格:無料

※プレイはこちら
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm21035

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