今後のアップデートと完成が期待される、注目の制作途中フリーゲーム3選(2021年11月号)

フリーゲーム,連載

日々、個性豊かな新作が誕生し続けているフリーゲーム。その中には完成品に限らず、現在制作途上のものもあり、公開後も都度実施されるアップデートで完成に向け、着々と進歩し続けている。

本記事では、そんな制作途上のフリーゲームより注目の3本を紹介。

今回はアドベンチャーゲーム(ノベルゲーム)2本、アクションゲーム1本の計3本をピックアップした。いずれも今後のアップデート、完成版の登場が期待されるタイトルだ。機会があればぜひ、実際にプレイしてその魅力を確かめてみて欲しい。

目次

  1. ノアの審判
  2. Kutopa R-17.99 チャプター1
  3. 瓶屋/Phial Merchant

ノアの審判

10歳の少女「ノア」は、ある夜に起きた”何か”によって不思議な洋館へと迷い込んでしまう。そこはノアが描いていた絵本の世界で、10人の個性豊かな住人が暮らしていた。ノアは彼らと交流を深めていくが、後にひとり、またひとりと住人たちが無慈悲に殺されていく。犯人は誰なのか。ノアは最後のひとりになるまで、真実を探していく。

そんな閉鎖空間内で起きる殺人事件と、世界の謎に迫るストーリーを描くアドベンチャーゲーム。全4+1章構成で、執筆時点では「Chapter0」と、「Chapter 1:事件編」がプレイできる。「事件編」と紹介したように、各章は2部構成(※Chapter0は除く)。最初の「事件編」では事件発生までの過程が描かれ、その後「解決編」で犯人を暴き、それを終えると次の章に移る仕組みになっている。

システム面では、住民への聞き込みなどで得た情報が細かく記録される機能を搭載。これを一定量集め、口を割らない住民に提示して情報を得る展開が用意されている。さらに「解決編」では住民全員と話し合い、犯人と真相をあぶり出す人狼ゲーム風のイベントも用意。前述の通り、執筆時点で公開中のバージョンではプレイできないが、単にストーリーを読み進めるだけに終わらない工夫と、ゲームとしての遊び応えも尊重した作りになるようだ。

序盤しか遊べないとは言え、全て終えるのに4時間以上かかる大ボリューム。情報集めに徹する探索パートも入念な調査、観察眼が試される難易度になっており、非常にやり応えがある。キャラクターを始めとするデザイン全般、演出面も独自色を出していて、後者はムービーデモも豊富に用意されるなど、非常に豪華なものになっているので必見だ。

「解決編」の犯人捜しが楽しめないのがもどかしいが、並々ならぬ気合が込められた作りの本作。作中の設定、推理ゲーム色の強いシステム周りに惹かれたのなら、ぜひプレイいただきたい1本だ。

[基本情報]
タイトル:『ノアの審判』
作者:飛鳥コウ
クリア時間:1~2時間
対応プラットフォーム:Windows、ブラウザ
価格:無料

ダウンロード・プレイはこちら
https://novelgame.jp/games/show/5088

Kutopa R-17.99 チャプター1

謎の男たちに誘拐され、サイボーグに改造されてしまった少年「セピア」が、監禁された謎の施設「クトパ」からの脱出を目指すノベルゲーム。ストーリーを読み進めつつ、都度現れる選択肢を選びながら進める正統派の作り。ただし、1回でも間違った選択肢を選んでしまうとバッドエンド直行になる、シビアな一面も持ち合わせている。

プレイして真っ先に興味をひくのが、独特な色遣いで描かれたキャラクターたちと豊富な一枚絵。特に後者はストーリーごとの状況、場面に応じた専用のものを用意するという驚くべき作り込みが成されている。キャラクターたちも個性の強い面子が揃っていて、中でもセピアの脱出を手助けする少女サイボーグの「アール」と、「コーモリ」という名前が付けられたタコ(!)はその異色の組み合わせも相まってインパクト抜群。他にも数多くの同じサイボーグの少年少女が登場し、誘拐されたという設定とは裏腹の明るい会話劇が繰り広げられていく。だが、光ある所に闇あり。サイボーグに改造されると人間の頃の記憶を失うとの設定、サイボーグたちそれぞれの過去など、残酷な状況を意識させる要素や演出も節々に仕込まれている。中でもラストのカットインはあまりにも衝撃的。人によっては背筋が凍る思いをするかもしれない。

プレイ時間にして大よそ30~40分ほどだが、ストーリーとキャラクター共に唯一無二の個性があり、無性に続きが見たくなる魅力が詰まった内容になっている。前述の通りバッドエンド直行の罠もあるが、事前にセーブ推奨メッセージが挟まるなど、ストレスなく遊べる作りになっているのも秀逸だ。
続くチャプター2の公開は2022年予定とのこと。完成版の登場も当分先のことになりそうだが、今後の展開が注目される作品。この設定とキャラクターたちの見た目に惹かれたのなら、すぐにでもプレイいただきたい1本だ。

[基本情報]
タイトル:『Kutopa R-17.99 チャプター1』
作者:トヨカノ
クリア時間:30~40分
対応プラットフォーム:Windows、ブラウザ
価格:無料

ダウンロード・プレイはこちら
https://novelgame.jp/games/show/5810

瓶屋/Phial Merchant

30世紀の技術を盗み、瓶に詰めて21世紀の中小企業に販売する業者「瓶屋」。その新入りである主人公に扮し、新型通信端末の設計図入手に挑戦する横スクロールのアクションゲーム。進行はステージクリア方式で、警備ドローンを始めとする様々な障害を潜り抜けながら、ゴールへの到達を目指す。

ただし、主人公のアクションは移動とジャンプ、端末の操作のみ。攻撃手段は持たない。また移動は最初の出だしが遅く、少しすると走り出すという独特な仕様。それによってジャンプの飛距離も変化し、助走が足りなければ、例え近場の足場でも飛び移ることすら叶わない。そのため、極力距離を取って助走をつけるのが必須。そんな際どい調節とタイミング計算が常に試され、簡単ながらも一筋縄ではいかない手応えが表現されている。

道中にも端末を操作することで出現させたり、引っ込められる色付きブロックの仕掛けが頻繁に登場。これを適切な順番で出現させるなりして、足場や通路を確保していくパズル的な展開も挟み込まれるようになっている。さらには監視カメラの目を潜り抜け、奥を目指すという潜入任務らしい展開も。この時に限り、僅かなミスが命取りという、難易度の急変が生じるのもちょっとした見所になっている。

全体的にシンプルなジャンプアクションという趣だが、各種独自仕様とステージ構成も相まって、なかなか歯応えのある作品になっている。ステージ進行中には上司の通信メッセージが都度表示されるなど、ストーリーと世界観もセンスが光る仕上がりだ。

前述の監視カメラを潜り抜ける場で、カメラの検知範囲がやたら広く、可視化されていないのが引っかかりはするものの、高難易度アクションゲームとしての醍醐味は見事に押さえられた作り。執筆時点でのバージョンでは序盤の2ステージしか遊べないが、システム周りの特徴は十分に味わえるので、アクションゲーム好きならば挑戦いただきたい1本だ。

[基本情報]
タイトル:『瓶屋/Phial Merchant』
作者:敦賀うたかた
クリア時間:1時間~1時間半
対応プラットフォーム:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/26805

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