同人ビジュアルノベル『五〇度の真夏が巡る』はじけて消えた夏を取り戻すため、時を翔る

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今年の夏は統計開始以来で東日本1位・西日本2位の平均気温を記録し、最高気温40度を超える日も各地で観測されるなど記録的な酷暑となった。都市部におけるヒートアイランド現象の影響や、この100年で夏の平均気温が3.2度上昇しているという統計結果などもあり、年々暑くなっていく夏にこれからも付き合わされる事になるのを思うと、とてもうんざりさせられる。

OTARIBA Games『五〇度の真夏が巡る』は、そんな夏を舞台とした同人ビジュアルノベルだ。
コミックマーケット91ならびにコミティア119にて体験版が頒布され、その後完成版がコミックマーケット94にて頒布されると共にメロンブックスにて委託販売が行われている。

憂鬱な理由は、猛暑だけじゃない

所は科学と音楽の街・武蔵野市吉祥寺。
世界は明日のクーラーの行方も知れない未曽有のエネルギー危機の中にあるが、主人公・七井翔にとってはどこ吹く風。愛飲する炭酸水を片手に、人気バンド「Not Park Bench」のメンバーとして大成している兄・爽介へのコンプレックスを拗らせつつバイトとバンドに明け暮れる日々を送っていた。

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翔はバイトの伝手から「まちおこし」のプロジェクトに参加することとなり、そこで旧友である御殿山雄一桜堤ゆい、市役所職員の五日市朋子、彼らの小学生時代の恩師である梅園先生らと出会うことになる。

俗に「コミュ障」「陰キャ」とも呼ばれる人づきあいが苦手な性格、定職は無し、音楽の道も中途半端。ネガティブ思考な翔が彼らとの交流を通じて、少しづつ少しづつ前を向けるようになっていく。こうした翔の変化の過程が本作の見所のひとつといえるだろう。

時間跳躍のカギを握る”時代遅れ”のアイテム

ほどなくして彼らに「とある事故」が降りかかるが、ひょんなことから時間が巻き戻ることになり、翔はこのチャンスを使って事故を回避することに成功する。
その時に手に握られていたのは一枚のテレホンカード。タイムリープは謎のテレホンカードによって引き起こされたものだった。

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テレホンカードについて、もしかしたら馴染みのない読者の方もいるかもしれない。
街頭の公衆電話に挿入して通話料金として使用することができる磁気型のプリペイドカードの一種で、使用すると残度数を示すパンチ穴が打たれるようになっている。携帯電話が一人一台の単位で普及した現代においては、公衆電話ともども使われる機会の少なくなった代物だ。

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このテレホンカードのタイムリープの発現に合わせて、翔の憧れるアイドルによく似たユリアという白衣の女性が翔の前に現れる。テレホンカードとユリア、避け得ぬ事故とタイムリープを巡る関係が果たして何なのかを突き止めるべく、翔は繰り返し時を駆けることとなる。

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なお、本作のリーフレットには作中のテレホンカードを模したカードが封入されている。公衆電話での実際の使用はできないが、物語への没入感を高めてくれる小粋な一品だ。

そして巡らない季節は巡る

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システムとしてはオーソドックスな選択肢式。
屈託のない天真爛漫な笑顔が魅力のゆい、引っ込み事案な一方で地下アイドル「愛澤らぶ」としての顔も持つ朋子、2人のヒロインにスポットを当てたそれぞれのルートと、真相究明編ともいえる3つのルートが存在している。
一周あたりのプレイ時間は2時間程度。一部やや尻すぼみな部分も見受けられこそするが、一本の映画を観るような感覚で楽しめるだろう。

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繰り返される夏の果てに何が待っているのか。その結末はテレホンカードを手にしたあなたが見届けてほしい。

[基本情報]
タイトル: 五〇度の真夏が巡る
制作者:  OTARIBA Games
クリア時間:  4時間~
対応OS: Windows(7以降) , macOS(10.9以降)
価格: ¥1080

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https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=386254

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    真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。