時間操作ドラッグと自身の記憶の謎を追え。見敵必殺のサムライ・ノワール『Katana ZERO』

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時代物などの創作物における「サムライ」のおおよそのイメージと言えば、切れ味鋭い日本刀を手に、卓越した剣技をもって相対する者を一刀のもとに切り伏せていく、というものであろう。「一撃必殺」という言葉には抗いがたい魅力があることは間違いない。

『Katana ZERO』はフリーウェアアクションゲーム『Tower of Heaven』(天国の塔)で知られているAsciisoftの制作による2Dアクションゲーム。販売はDevolver Digitalが担当しており、2019年4月18日よりSTEAMにてWindowsPC版、ニンテンドーeショップにてNintendo Switch版がそれぞれ配信中となっている。

”死ぬことと見つけたり”な必殺ステルスアクション

『Katana ZERO』では横スクロールのアクションパートと幕間劇を交互に繰り返す形でゲームが進行していく。
アクションパートではサムライを操作し、ジャンプ、刀攻撃、緊急回避、アイテムの投げつけ、壁蹴り、時間の流れを遅くするスローモーション能力等を駆使してエリア内の敵をせん滅していくことになる。

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刀攻撃は敵を倒すのみならず撃たれた銃弾を弾き返すことも可能。しかし高速で飛来する銃弾をタイミングよく弾き返すのは難しいため、スローモーションを発動させてうまくタイミングを計ろう。スローモーションは無制限に使用できるわけではなく画面左上のバッテリー表記のゲージを使用するため、どのタイミングで使うかの配分がポイントになる。

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また、緊急回避や壁蹴りには無敵時間があり、敵の攻撃のみならずレーザートラップ等を潜り抜けるのにも使用する。一度に大量の弾を放つマシンガンや散弾銃が相手の場合、刀による銃弾の弾き返しは間に合わないので緊急回避で潜り抜けることになるだろう。

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いくら超人的な能力があると言っても、自分も敵も基本的に一撃で死ぬ。銃を持ち徒党を組んでいる敵に対して正面切って挑みにかかるのは不利である。ドア・アタックや屋根裏からの強襲、アイテムの投げつけなどでうまく隙を突いて敵の数を減らしていこう。また、ミッションによっては警備に気付かれないように進む必要があるなど、ステルス要素が強いことが本作のアクション面での特徴といえるだろう。

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(ディスコの群衆に紛れるこのサムライ、ノリノリである)

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本作のアクションパートはサムライの持つ予知能力という体裁を取っており、何度倒されても爆速で巻き戻してリトライができるようになっている。また、エリアを突破した際には、監視カメラのビデオテープ風の”実際の映像”がリプレイされる。リプレイ映像ではスローモーション能力の発動は見えないため、あたかも超人的な動きで銃撃を弾き返し敵を切り伏せているようにみえる、という寸法である。折角ならば格好良く決めたいところだ。

対話を拒否する会話劇

『Katana ZERO』の主人公は、裏社会では「ドラゴン」の通り名で恐れられるサムライの殺し屋。合間劇のパートでは彼に関する物語が展開されていく。

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サムライは過去の戦争での傷の影響で記憶が無くなっているほか、重度の薬物中毒を患っており、それによって予知能力を獲得したとされる。
己の過去と思しき悪夢と薬物の禁断症状に苦しめられる日々の中、彼は殺しの依頼と平行してカウンセリングを受けつつ、時間操作ドラッグと自身の記憶の謎を追うことになる。

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本作の最もユニークなポイントとして、合間劇の最中に現れる制限時間付きの選択肢があり、タイマーが赤の段階で選択肢を選ぶことで、相手の会話に割り込んで発言することができる。
これにより「登場人物からの問いかけに対して選択肢で応答する」という一般的なアドベンチャーゲームの構造をサラリと崩しつつ、「コミュニケーションの拒否」をシステム面から描いている。割り込み発言時に相手の発言の吹き出しの文字がバラバラに飛び散る演出も印象的だ。

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選択肢によって物語が分岐するといった事こそないが、カウンセリングを無視して「早く薬をよこせ」と叫び続ける典型的な薬物中毒者のごとき振る舞いをしたり、チンピラの長々とした前口上を”切って捨てる”など、ロール・プレイとそれに対する人物の反応を楽しめるだろう。

殺戮者に陽の光は差さない

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本作の日本語翻訳は架け橋ゲームズが担当しており、リリース直後より全面日本語でのプレイが可能となっている。翻訳についても違和感のある直訳的な個所は無くすんなりと読むことができた。約10年前に『Tower of Heaven』を自力で訳しながらプレイしていた身としては隔世の差を感じるところである。

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本作について率直に述べると、プレイしていてスカッとする類いのゲームではない。そもそもが退廃と暴力と薬物を起点としているのだから明るい話題などありようは無く、混濁する過去と現在、敵味方共に命が軽すぎるがためにかえって何の感慨も残さない剣戟、追い込まれていく立場、決着のつかない物語、途中で現れる「仮面の男たち」が示唆する通りの「救うことができない命」の存在など、闇街道を往くろくでなしのサムライに用意されているものは救いも報いもない道程だ。

爽快なバイオレンスアクションを期待すると肩透かしになるだろうが、翻せばこうした苦味こそが本作の味わいと捉えることもできるだろう。ハッピーエンドが全てではない、たまには気分を変えてビターな作品に触れてみたい、という人に薦めたい作品だ。

[基本情報]
タイトル: Katana ZERO
制作者: Asciisoft
クリア時間:  5時間~
対応OS: Windows / Nintendo Switch
価格: ¥1,520

↓ダウンロードはこちらから
(STEAM)

(Nintendo eShop)
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000017138

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    真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。